施設を運営するにあたって、空調システムの導入は必要不可欠です。
数ある空調システムのうち、どれを導入するのがベストなのかお悩みの事業者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、代表的な空調システムである“ビル用マルチエアコン”のメリットを、導入時に注意すべき点や意識したいポイントとともにお伝えします。
ほかのシステムとの違いも解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ビル用マルチエアコンとは、1台の室外機で複数の室内機を個別に運転できる、業務用の空調システムのことです。
略して“ビルマル”ともよばれており、主にオフィスビルや商業施設など、部屋ごとに温度調節が必要な建物に導入されています。
このシステムには、室外機と室内機をつなぐ冷媒配管が非常に長いという特徴があります。
総配管実長が最長1,000mで、室外機と室内機の高低差も50mまで許容されているため、高層ビルにも導入が可能です。
ビル用マルチエアコンは、主に以下の7種類に分けられます。
それぞれの特徴をお伝えしますので、一つずつ確認していきましょう。
ビル用マルチエアコンの種類
冷暖切替タイプでは、室外機の冷暖房を切り替えると、すべての室内機がそれに反応します。
そのため、部屋ごとに運転を切り替えることはできますが、冷暖房の選択はできません。
このタイプのビル用マルチエアコンは利便性にやや欠ける分、導入にかかる費用が安いのが魅力です。
冷暖フリータイプは、前述の冷暖切替タイプとは異なり、部屋ごとに冷暖房を切り替えられます。
分流コントローラーや冷媒配管などの特別な設備が追加で必要となるので、導入時の費用はかさみますが、利便性を考えると費用対効果は高いといえるでしょう。
「ビル用マルチエアコンを導入したいけれど、大がかりな工事は避けたい……」とお考えであれば、リニューアルタイプのビル用マルチエアコンを選択するのも一つの手です。
このタイプの特徴は、既存の配線をそのまま利用して空調システムを更新できることです。
導入にあたって大規模な作業が不要なため、工事期間が短く済むうえ、コストの削減にもつながります。
クレーン車を使わずに搬入できるような、小型の室外機を利用するのが、コンパクトタイプのビル用マルチエアコンです。
重機が侵入できない立地の建物や、室外機を置くスペースに限りのある施設などへの導入に適しています。
氷蓄熱タイプのビル用マルチエアコンには、“氷蓄熱槽”とよばれる特別な設備が搭載されています。
氷蓄熱槽は、電気代が安価な夜間に氷を生成し、それを貯蔵して冷暖房運転に利用する設備です。
この設備によって運転効率が向上するため、電気代の節約や省エネにつながります。
冷房の使用頻度が高い地域では、このタイプが特に活躍してくれるでしょう。
寒冷地にある建物に暖房機を導入するのであれば、高暖房タイプが有力な候補となります。
高暖房タイプのビル用マルチエアコンには、凍結防止機能や高性能コンプレッサーが搭載されているため、寒冷地でも安定した稼働が実現します。
くわえて、暖房が立ち上がるまでの時間が短く、省エネ性能が高いのも魅力です。
水熱源タイプの最大の特徴は、水配管を通る水を熱源として室温を調節する点にあります。
水は熱交換効率が高く、外気温の影響を受けにくいため、安定した冷暖房運転が実現します。
さらに、水配管は冷媒配管と比べて長尺化が容易なので、高層ビルや地下施設にも難なく導入できるのもうれしいポイントです。
ビル用マルチエアコンは、同じく大型の空調システムである“業務用エアコン”と混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。
主な違いは以下の通りです。
ビル用マルチエアコンと業務用エアコンの違い
ビル用マルチエアコン | 業務用エアコン | |
設置規模 | 延べ床面積が3000㎡以上の大規模な建物への導入に向いている | 比較的小規模な店舗や事務所などへの導入に向いている |
運転方法 | 複数の室内機を個別に運転できる | 複数の室内機を同時に運転する |
電源 | 室外機と室内機を独立した電源で動作する | 室外機に搭載されている電源で複数の室内機を動作する |
ビル用マルチエアコンと業務用エアコンには、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがあり、どちらが優れているというわけではありません。
それを理解したうえで、ニーズによって使い分けることが重要です。
続いて、ビル用マルチエアコンならではの3つのメリットをお伝えします。
導入を検討する際にお役立てください。
【ビル用マルチエアコンのメリット】
省エネ効果が高いことは、ビル用マルチエアコンの大きなメリットです。
ビル用マルチエアコンは室内機ごとに電源が独立しており、運転を個別に切り替えられます。
そのため、時間帯や各部屋の使用状況に合わせて運転を調整すれば、快適な室温を少ない電力で保てます。
病院や宿泊施設など、部屋ごとに使用頻度が異なる建物を運営する事業者様にとって、この点は非常に魅力的なのではないでしょうか。
ビル用マルチエアコンのメリットとして、さまざまなタイプの室内機と組み合わせられる点も挙げられます。
先ほど比較対象に挙げた業務用エアコンは、異なるタイプの室内機を同時に運転することができません。
一方、ビル用マルチエアコンは天井カセット形や天井吊り形、ビルトイン形など、すべての室内機を1台の室外機で運転することができます。
ただし、室外機の機種やスペックによっては、同時に接続できる室内機の数が限られている場合もあります。
ビル用マルチエアコンを選定する際には、導入予定の室内機をすべて運転できるかどうかも必ず確認しましょう。
ほかの空調システムと比べて安く導入できることも、ビル用マルチエアコンのメリットの一つです。
繰り返しになりますが、ビル用マルチエアコンは1台の室外機で複数の室内機を運転できます。
導入にあたって必要な室外機が1台だけで済むため、初期費用の削減につながるわけです。
ビル用マルチエアコンには多くのメリットがある反面、理解しておくべき注意点もいくつか存在します。
導入してから後悔しないためにも、次の3つの注意点を必ず押さえておきましょう。
【ビル用マルチエアコンの注意点】
ビル用マルチエアコンの導入時には、高額な搬入コストがかかる場合があります。
クレーン車やフォークリフトなどを使う大規模な工事が伴うときは、搬入コストがより高くなるでしょう。
想定外の出費で経営を圧迫しないよう、導入時にどれだけの費用がかかるのかをきちんとシミュレーションすることが大切です。
室外機が故障した場合に、すべての室内機が停止してしまうことも、ビル用マルチエアコンの弱点といえます。
もし室外機の修理に時間がかかると、そのあいだは空調が使えないので、施設内にいる方々の体調に悪影響を与えかねません。
こうした事態を未然に防ぐためにも、室外機の定期的なメンテナンスは不可欠です。
関連記事:業務用エアコンの故障のサインは?故障の原因と対処法も解説
ビル用マルチエアコンの注意点として、電気代が高くなる可能性があることも挙げられます。
一般的な業務用エアコンの電圧が100Vなのに対して、ビル用マルチエアコンの電圧は200Vです。
そのため、使用方法によっては電気代がかさんでしまうリスクをはらんでいます。
使っていない部屋の室内機はこまめに停止する、または電力効率に優れたシステムを導入するなど、電気代を抑える工夫を凝らしたいところです。
最後に、ビル用マルチエアコンを選ぶ際に意識したい3つのポイントを解説します。
すべてしっかりと把握して、ビル用マルチエアコンの導入を成功に導きましょう。
【ビル用マルチエアコンの選び方】
ビル用マルチエアコンは、導入する建物の部屋数に合わせて選ぶことが重要です。
ビル用マルチエアコンの室外機は、機種ごとに「最大で何台の室内機を運転できるのか」が決まっています。
そのため、導入を検討している建物の部屋数に応じて、最適な機種を選ぶ必要があるのです。
性能と省エネ効果のバランスが取れているかどうかも、ビル用マルチエアコンを選ぶ際に意識したいポイントです。
高性能なビル用マルチエアコンを導入すれば、快適な空間づくりが実現するでしょう。
しかし、ビル用マルチエアコンは、性能に比例して消費電力も多くなる傾向にあります。
このことを理解しないまま、必要以上に高性能なシステムを導入すると、電気代で経営を圧迫してしまうかもしれません。
電気代を少しでも安く抑えられるよう、導入するビル用マルチエアコンの性能と消費電力量のバランスはきちんと確認しておきたいところです。
ビル用マルチエアコンの選定時には、保証サービスの充実度も確認しておくことをおすすめします。
室外機や室内機には、1年間のメーカー保証がついているのが一般的です。
導入から1年以内に空調設備が故障しても、その要因が保証対象に含まれていれば、修理を無償で依頼できます。
ビル用マルチエアコンを取り扱う業者によっては、この保証を独自に延長してくれる場合があります。
保証期間は長いに越したことはないため、事前に確かめておくとよいでしょう。
今回は、ビル用マルチエアコンについて徹底解説しました。
ビル用マルチエアコンは、1台の室外機で複数の室内機を個別に運転できる、業務用の空調システムです。
省エネ効果が高いうえ、導入の初期費用も安いことから、多くの設備で利用されています。
設置する建物の規模やシステムの性能、保証サービスの充実度などを考慮して、適切なビル用マルチエアコンを選びましょう。
ビル用マルチエアコンの導入を安心して任せられる業者をお探しなら、エアコン卸センターにぜひご相談ください。
弊社の取り扱う空調機には、通常1年間のところを延長して、10年間の保証をおつけしており、期間内であれば回数制限なく修理いたします。
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この記事の監修者
物販、飲食、事務所など商業施設をメインに20年以上空調設備工事に携わらせていただきました。
近年の猛暑の影響もあり、インフラとしての重要性が益々高まってきております。
これまで培ってきたスキルと経験を元に、空調設備工事をより迅速により正確に行いたいと考えております。